相手も自分も傷つけず、さわやかに主張する方法

もしも身に覚えのないことで怒られた時、あなたはどんな態度に出ますか?
(本当は言いたいことがある。…けど、空気を読んで黙っておこう)と心の中に自分の気持ちを押し込めるでしょうか?
それとも「なんでそんなこと言われなきゃいけないんですか?!」と激高し、相手を言い負かしますか?

豊かな人間関係を継続していくためには、自分の気持ちを押し殺し続けることも、相手を言い負かすことも、決して良い方法とは言えません。

この記事では、自分も相手も傷つけないで、爽やかに自分の意見を主張する方法をご紹介。
「コミュニケーションがうまくいかない」「人間関係が難しい」そんな方はぜひご活用ください!

相手も自分も傷つけず、爽やかに主張する「アサーション」

中野信子さんは、著書『世界の頭のいい人がやっていることを1冊にまとめてみた』の中で、相手を言い負かしたり、自分の気持ちを無視したりせず、相手も自分も傷つけない自己表現方法「アサーション」について言及しています。

(原文抜粋引用)

「議論を戦わせて、相手のミスを突き、自分の考えを通す」という方法を有効だと考える人も多いかもしれません。特に、欧米で仕事をしていたら、なおさらです。
 でもそれは、相手を傷つけてしまう場合があります。傷つけられた相手はどう感じるでしょう?「もう、こんな奴とは二度と仕事したくない」と思ったり、「こいつともう一度仕事をすることがあれば、徹底的に恥をかかせてやろう」なんて報復心に燃えたりしてしまうんじゃないでしょうか?これは欧米に限らず、世界中どこでも同じこと。人間の本質によるものです。
 相手を言い負かしたそのときだけは、優越感に浸れます。でも、その相手と持続的に良い関係を築いていくことは難しくなってしまうのです。それは、ビジネスのあり方としては、あまり良い方法ではないですよね。

(中略)

気持ちよ良い会話を生み出す「アサーション・トレーニング」

「そう言われても、上手くできそうにない…」という人もいるかもしれません。
一旦クセ付けされてしまった自分の行動は、そう簡単には方向転換できませんよね。
 でも、解決策はあります。その一つが、「アサーション・トレーニング」。自分の意見を冷静に伝え、かつ相手の立場をも考慮したコミュニケーションを体得するための、心理学を使った方法です。

 アサーション・トレーニングをするにあたっては、人間の対応パターンを「攻撃的」「受け身的」「アサーティブ(誠実で対等)」という三つに分けて考えることから始まります。そして、この中でも「アサーティブ」にあたる態度ををとることができるように練習するのが、アサーション・トレーニングとなります。

 例えば、身に覚えのないことで怒られたりして嫌な思いをしたとしましょう。このとき「逆切れ」をして、怒っている相手に怒鳴り返すのは「攻撃的」な態度となります。
 口をつぐんで、本当は自分は何の罪もないのに「ごめんなさい…」と謝ってしまうのは「受け身的」となります。

 では、あまり聞きなれない「アサーティブ」に当たる態度とは、どんなものなのでしょうか?それは、「私はそのようなことをした覚えがないですけど、あなたからはそのように思われているので、とても悲しいです」などと言うことで、相手を責めもしなければ、自分を卑屈にすることもないことを指します。つまり、自分の素直な気持ちを伝えるのです。
「『あなた』がそんなことを思うなんて」とか「『あなた』はどうしてそんな風に思うのですか?」などの言い方をせず、「『私』はそんな風に思われて悲しい」というように、あくまで『私』を主語にする言い方に徹するのが秘訣です。
 少し練習が必要ですが、「アサーティブ」な態度をとるクセを、ぜひつけてみてくださいね。

 アサーション・トレーニングをすることで、さわやかに主張できるようになります。そして、不当に扱われたり、人に利用されたりすることが減ります。また、怒りをぶつけて相手との関係を悪くしてしまうとか、腹が立ってストレスをため込んでしまうという状況も、未然に防げるようになります。

 別に、相手を議論で打ち負かさなくてもいいのです。肩書や業績で勝つ必要もまったくありません。
 ただ、相手の言うことにしっかり耳を傾けながらも、笑顔を絶やさず、自分の主張は曲げない。言葉で書くと簡単ですが、実は意外と難しいこと。でも少しずつ、練習してみてください。誰でもできるようになっていきますから。
 それだけで、あなたのペースに巻き込まれて味方になってくれる人が倍増します。不思議なことですが、だまされたと思ってやってみてください。その効果に驚くことは間違いありません!

『世界の頭のいい人がやっていることを1冊にまとめてみた』(中野信子)

3つの自己表現を理解する

ここで改めて”3つの自己表現”とはなにか?
アサーション・トレーニングの訓練を受けたことのある臨床心理士・平木典子さんの著書『アサーション入門 自分も相手も大切にする表現方法』を参考に、具体的に解説していきます。

非主張的自己表現

(原文抜粋引用)

「言わない」「言いそこなう」
 非主張的自己表現とは、自分の意見や気持ちを言わない/言いそこなう、言っても相手に伝わりにくい自己表現です。これにはあいまいな表現や、人に無視されやすい自信なげな小さな声での話し方や消極的態度も含まれます。「自分はダメだ」とか「言っても分かってもらえない」などのあきらめの気持ちが潜んでいたりします。
 非言語的表現は、相手から理解されにくいことがあります。また、相手を優先し、自分を後回しにするため、結果として相手の言いなりになってしまうこともあります。相手と意見が異なるときでも自分の意見を言わないため、理解されなかったり、無視されたり、同意したと誤解されたりします。自分としては主張を抑えて譲ったつもりでも、配慮したことは伝わらず、感謝されることもないでしょう。

(中略)

 自分をないがしろにして、相手の言いなりになってしまうため、だんだん自分でも言いたいことが分からなくなっていきます。自分で決められない、あるいは言い方が分からないといった状態になることもあります。

引用:アサーション入門 自分も相手も大切にする表現方法』(平木典子)

非主張的な自己表現をしていると、自発性や個性といったものを失うことになりがちです。なぜなら、相手に合わせよう合わせようと思うあまり、気がつかないうちに自己否定をしてしまうから。

さらに、「相手に合わせる」態度は一見、控えめで謙虚だと思われます。相手はそんな態度に「同意してくれた」と思うことでしょう。しかしその実、腹の内では「なんでこの人は分かってくれないの?」「合わせてやったのに」などと不満や恨みをため込んでいるわけですから、相手からしたら「だったら最初から自分の意見を言ってくれ!」となるものです。

常に「相手に合わせる」という態度を取っていると、相手の居心地が悪くなることも。
「なんでもいいよ」「合わせるよ」「誘ってくれたから遊ぶ」などと相手に責任を丸投げし、自分の言動に責任を持たない態度は、優越感を感じたい人には心地よいでしょう。
しかし、そうではない人からすると「この人、自分の意見がないのかな?」「なんでもいいって言うわりに楽しそうじゃないな」などと、居心地の悪さを感じさせてしまいます。結果的に、「対等に関わりたい」という人はどんどん離れていき、「言うとおりにさせたい。他人を見下していたい」という支配的で自己中心的な人が寄って来ることが多いです。

攻撃的自己表現

 (原文抜粋引用)

 自分の意見や考え、気持ちを「はっきり言う」ことで自己主張するのですが、相手の気持ちは無視、あるいは軽視して、結果的に自分を押し付けることになる表現です。
 攻撃的自己表現は、日主張的自己表現とは対照的に、自分の言い分ゃ気持ちを通そうとするものです。たとえば、「言い放しにする」「押し付ける」「言い負かす」「命令する」「操作する」「大声で怒鳴る」などは、攻撃的自己表現です。

相手を巧妙に操作する場合 
 ただ、攻撃的自己表現には、明らかに「攻撃的な」表現もありますが、そうでないものもあります。ハキハキと表情豊かに自分の意見を述べているように見えるとき、丁寧でやさしい言葉や態度でおだてたり甘えたりしているときでも、自分の思い通りに操作するとしたら、攻撃的自己表現にあたります。雑談での「押しつけがましいダメ押し」や「不必要なひと言」なども、優位に立つための攻撃的表現といえます。
 セクシャルハラスメント、パワーハラスメントなどは、攻撃的自己表現の典型的な例です。相手の同意や善意に依存し(つけこみ)、自分の発言を通すことばかり気を取られ、相手の反応は無視/軽視する自己表現です。

敬遠され、孤立しがち
 攻撃的自己表現では、自分が正しいかのように言い張り、相手を黙らせようとしたり、同意させようとしたりします。自分と異なる意見やものの見方に耳を傾けようとせず、雑音、異物、脅威と捉えて、無視、排斥しようとすることもあります。
 このような表現をしている人は、一見堂々としているように見えますが、どこか防御的で、必要以上に威張ったり強がったりたりしがちです。
 結果としてたしかに意見は通るのですが、本人が後味の悪い思いをすることも少なくありません。自分の言い分が通れば、一時的には満足感も覚えますし、優位に立って勝った気分になります。しかし、そんなことを続けていると、利害関係で付き合う人はまわりに残るでしょうが、それ以外の人々からは敬遠され、孤立することになります。

引用:アサーション入門 自分も相手も大切にする表現方法』(平木典子)

攻撃的自己表現をしてしまう人は、素敵な人間関係は一生築けない。
攻撃的な態度をとられたことのある人は多いと思います。他人を攻撃する態度、たとえば見下した物言い、人格否定的な言葉を使う、馬鹿にした態度を取るような相手と長く付き合いたいと思いますか?おそらくほぼ100%「できれば関わりたくない」と思うはず。
相手に対して、「自分の思うように動いてほしい」という気持ちは、態度や言葉から必ず相手に伝わります。

アサーティブな自己表現

非主張的でもなく攻撃的でもない、「アサーティブ」な自己表現。それは、相手の言動を否定せず、自分が感じたことを素直に相手に伝える表現法です。
平木典子さんの考えは以下の通り。

①自分の考えや気持ちを捉え、それを正直に伝えてみようとする
②伝えたら、相手の反応を受け止めようとする

引用:『アサーション入門 自分も相手も大切にする表現方法』(平木典子)

大事なのは、自分の素直な気持ちや考えを相手に伝えたあとの、相手の反応を受け止めようとする姿勢です。

自分が伝えたことを相手がどう受け取るかは分かりません。
「そうなんだね」と理解してくれるかもしれないし、「どうしてそう思うの?」と納得してくれないかもしれない。もしかしたら「信じられない!」と怒り出したり泣き出すかもしれない。たとえ相手がどんな態度に出たとしても、相手を受け止めようとする。
自分の気持ちや考えも、相手の気持ちや考えも否定しないこと。それこそがアサーティブな自己表現です。

アサーションの基本となる2つのステップ

では「アサーティブ」な考え方になるために必要なこととはなんでしょうか?
引き続き、平木典子さんの著書『アサーション入門 自分も相手も大切にする表現方法』を参考にしていきたいと思います。

ステップ1 自分の気持ちを確かめる

(原文抜粋引用)
  
 最初のステップは、自分の意見や気持ちを確かめることです。
 自分を表現するには、まずこれを明確にする必要があります。他者に気を取られていたり、他者を優先させていたりすると、この作業がおろそかになります。
 とりあえず、自分の意見や気持ちを確かめることに集中する時間をとりましょう。そうすることで、自分の明確な気持ちや意見が捉えられるでしょう。慣れてくると、気持ちを確かめるのにかかる時間も短縮されていきます。
 大切なことは、あいまいな考えや気持ち、たとえば、悲しくもあり腹立たしくもありといった対立する感情や迷い、困惑などに素直に気づくことです。
 そのような考えや気持ちは、それはそれであっていいのです。
 正直に自分の気持ちを確かめようと、いい感情、嫌な感情、迷い、緊張や不安をありのままに受け入れ、大切にすることがアサーションの出発点です。
 つまり、アサーションは、「明確な気持ちや考え、白黒はっきりしたことを、言葉に出して明快に表現する」ことだけではないのです。「今は、決められない」とか「二つの矛盾した気持ちがある」とか、困惑や緊張を伝えることもアサーションなのです。

引用:『アサーション入門 自分も相手も大切にする表現方法』(平木典子)

自分の心の声に耳を傾けることから始めてみましょう。最初は相手に伝えるを意識をしなくてOK。
僕の場合、相手に伝えることを意識してしまうと、どうにも「こういったら相手は…」と、相手ベースで考えてしまってうまくいきませんでした。
「○○されて、○○と言われて、自分は今どんな気持ち?」と、丁寧に何度も何度も自問自答してみましょう!

ステップ2 正直に言語化してみる

(原文抜粋引用)

 第二のステップでは、第一のステップで確かめた思いを、自分が持ち合わせている語彙表現法をを使い、なるべく正直に、率直に言語化してみます。
明確に言えることもあるでしょうが、「迷っている」「困っている」「うまく言えない」という気持ち、あるいは「行きたい気持ちと行きたくない気持ち両方」があれば、それを伝えてよいのです。それが、素直で正直な思いだからです。
 さて、自分の気持ちを言語化したら、それを受ける「相手の表現」を大切にする動きも必要です。
 相手に心を向け、自分の思いはどう受け止められたかをきちんと見届けましょう。相手にも自分と同じように、思いを確かめ、表現するプロセスがあります。それを待ち、聴くことで、はじめてアサーティブなやりとりが成立します。
 このやり取りは、「相手の存在を認め、相手を自分と同じように大切にしようとする」という思いの表現なのです。

引用:アサーション入門 自分も相手も大切にする表現方法』(平木典子)

大切なのは、”自分の気持ちを素直に言葉にして相手に伝える”こと。
「正直に伝えると相手は○○と思うかも…」と想像して、あいまいな言葉でごまかして逃げないでください。
「正直に話したら馬鹿にされるかも…」と想像して、攻撃的な態度に出るのもやめてください。
あなたの言葉をどう受け取るかは相手次第。どんなに想像しても相手の反応は予測できません。

怖いかもしれないけれど、勇気を持って自分の気持ちを素直に伝えてみてください!

相手も自分も傷つけず、さわやかに主張する方法 まとめ

いかがでしたか?

自分の言いたいことを我慢して相手に合わせてしまう。
相手を自分の言うとおりにさせたくて、思わず攻撃的な態度に出てしまう。

心当たりのある方はぜひ、「アサーション」を取り入れてみてください。
相手も自分も傷つけない自己表現ができるようになると、自分の心が軽くなるだけでなく、相手にも良い影響を与えます。
自分も相手も心地よい関係が自然とできれば、人生がグーっと豊かになっていきますよ♪

みや

みや

新しい体験をするのが好きです。
エンタメも好きです。特にドラマは好きなので感想レビューをどんどん書いてます。
自身のコミュニケーション下手を克服すべく、日々コミュニケーションや人間関係に関する勉強をしています。
内向型のアドバイザーとしても活動中です。 

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