インプロとは?

インプロとは?

インプロの基本情報

インプロとはImprovisation(インプロビゼーション)の略称で、”即興”を意味します。
即興といえば即興音楽、即興ダンスといったものもありますが、そのなかでも「インプロ」といえば”即興演劇”のことを指します。

インプロ(即興演劇)その名の通り、台本のない中即興で物語を作り上げていく演劇です。
パートナーと互いのアイディアを受け入れあいながら、影響を受け合いながら、その場その場でストーリーをつ作り上げていきます。

キース・ジョンストン

インプロを発展させたとして世界的な人物が劇作家・演出家のキース・ジョンストン(1933~2023)です。

キースは俳優たちと関わるうちに、俳優たちがさまざまな問題を抱えていることに気がつきました。
その問題を解決するためにキースは数多くのインプロゲームを考案。

さらにキースは、もともと俳優訓練のために作ったインプロゲームを観客に披露できないかと考えました。
そこでショーとして観客に観せるためのフォーマットをいくつも開発したのです。

TEDでインプロについて話すキース・ジョンストン(2016年)

教育現場や企業研修にも取り入れられている

俳優訓練として活用されてきたインプロですが、近年俳優だけではなく一般の人たちも身につけた方良いではないか?と注目されるようになってきました。

アメリカではすでにGoogleやNetflix、さらにディズニー映画でおなじみのPixerといった大手企業でも社員研修として取り入れられています。また教育現場でもMBA(経営学博士)のプログラムにインプロが組み込まれています

日本でも少しずつ企業研修に取り入れられ始めています。

インプロの基本マインド

インプロには大事にされている基本マインドがあります。そのうちのいくつかをご紹介します。

頭の中で検閲していることに気づく

インプロが上手なのは7歳~9歳くらい(小学校2年生~3年生)だと言われています。

逆に大人になればなるほどインプロが下手になっていきます。いざ即興でなにか演じようとしても、

「人からどう思われるだろう…」
「うまくいかなかったらどうしよう…」
「面白いことやらなきゃ…」
「こんなことしたらバカにされるかも…」
「賢いと思われたい」

「ちゃんとしなきゃ」

と、自然に湧いたアイディアを頭の中で検閲してしまいます。

キース・ジョンストンも著書のなかでこう述べています。

私は子供を成長していない大人とはみなさず、逆に大人を子どもが退化したものだと考えるようになりました。
(引用元:インプロ~自由自在な行動表現~ 著:キース・ジョンストン/訳:三輪えり花

子どもの頃は「周りからどう見られるか」という自意識がまだそこまで強くないですし、未知なことに対しては”恐怖”よりもむしろワクワクして飛び込んでいくものです。

子どもの頃を思い出してみてください。
台本なんかなくても”ヒーローごっこ”や”おままごと”をして勝手に遊んでいましたよね。

しかし大人になるにつれ「周りからどう見られるか?」という自意識が強くなり、「失敗したらどうしよう」という未知への恐れから、自然と湧いたアイディアをそのまま表現することをためらうようになってしまうのです。

ただし検閲自体は悪いことではありません。
空気を読むことも周囲に合わせることも、場合によっては必要な処世術です。検閲はいわば自分を守るために身につけてきた防御スキルなんですね。

しかしこの検閲が強く働きすぎると自由な発想を阻害してしまうのも事実。
そこでインプロでは、検閲するかしないかをコントロールできるようになることを目指します。

インプロではspontaneous(スポンティーニアス)という言葉がしばしば使われます。意味は「自発的な」「自然発生的な」「計算されていない」です。

インプロ初心者はまず、スポンティーニアスしたアイディアを検閲せずそのまま表現できるようにするところからスタートします。
ごく簡単なように思えるかもしれませんが、社会を生きてきた大人たちにとってこれがとても難しいのです。

日本のインプロ指導者の第一人者である今井純さんも著書でこう述べています。

なんでもいいアイディアを出すことに、人は大きな抵抗を感じる。
自由という広大な範囲の中で、それが「いいもの」なのか、「ダメなもの」なのか、自分では判断できない。

他の人が「面白い」と思うもの、自分より上の人やマスコミの人から「いい」と教えられたものに支配されている。

いちばん最初にひらめいたアイディアを自分で否定してしまう。
「こんなんじゃ、つまんないよな」「こんなこと言っちゃったら、どう思われるんだろう?」…。頭の中で一番いいと思われるアイディアをあれやこれやと考える。

多くの人は個性的であること、クリエイティブであることを、誰も思いつかない奇抜なことをすることだと勘違いしている。
当たり前のことは努力がいらないので、それでは見ている人は満足しないだろうと思っている。

自分の小さな潜在意識に住む自分には、本当に一番いいアイディアなんか判断できないことを知るべきだ。

自分で「いい」と判断できるものなど、たいしたものではない。
自分で「ダメだ」と判断できるほど、あなたの意識や感性は開かれていない。

一般常識的な見方にすっかり汚染されていて、それに気づいていないのだから。

(引用元:「自由になるのは大変なのだ~インプロマニュアル~」著:今井純)

自分で自分のアイディアを否定することなく、素直に表現できるようになることがいかに難しいか、インプロをやると痛感させられます。

相手に良い時間を与える

インプロには、

「Make your partner look good」(パートナーを輝かせる)
「Inspire your partner」(パートナーを鼓舞する)

「Create together」(一緒に楽しむ)

という言葉があります。

パートナーにいい時間を与えつつ一緒に楽しめるようになることも、インプロの基本マインドの一つです。

それぞれの人から生まれたアイディアをお互いに受け容れ合い、影響し合い、ふくらませることで誰もつくったことのない新しい物語を生み出すことができる、それがインプロの醍醐味です。

その状態を可能にするのが「Yes and」です。

まずは相手が出してくれたアイディアを「Yes」して受け入れます。そして相手のアイディアをから湧いた自分のアイディアを「and」でふくらませます
そうして互いに互いのアイディアを受け入れ合っていくことで物語を作っていきます。

簡単そうに思えるかもしれませんがこれがなかなか難しく、初心者の多くは無意識に相手のアイディアを拒否したり壊したりしてしまいます。

僕もインプロ始めたての頃、自分では相手のアイディアを否定したつもりはないのに、フィードバックでパートナーから(あるいは第三者から)、「あのときどうして相手のアイディアを否定したの?」と言われることがよくありました。

無意識に相手のアイディアを否定しまっていたのです。

もうこれは主観では気づけないことなので、フィードバックしてもらい、”相手のアイディアを否定してしまっている自分”を教えてもらうしか気づく方法はありません。

気づけないとそのまま何も変わりませんが、現実を知ることができると自分の言動を意識的に変えることができます。
僕は実践とフィードバックを積み重ねた結果、少しずつ相手のアイディアを受け入れることが自然とできるようになっていきました。

まずは相手の意見を拒否したり壊したりせず、「Yes」と受け入れパートナーにいい時間を与えられるようになることを目指します。


失敗をオープンにする

大人になればなるほど失敗は怖いものですよね。

できれば失敗したくない。「いざ失敗してしまったら…」と考えると挑戦することができない。そういう状態では自由な発想はおろか、相手のアイディアを素直に受け入れることもままならなくなってしまいます。

失敗を隠そうとしたり、拗ねた態度をとってしまうとその場の空気が悪くなります。するとさらに失敗することができない場になってしまうのです。

また、「失敗しないように」と慎重になりすぎていても、どんどん失敗することが怖くなります。

インプロではとっとと失敗してしまったほうがいいし、失敗を隠さずオープンにしたほうがいいと言われます。

失敗をオープンにしてる人はチャーミングで、そういう人がいると場の空気も明るくなります。するとどんどん失敗できる場になっていくのです。
昨今でいうところの”心理的安全性”がその場にうまれます。

また、失敗を恐れずリスクをとっている人はとても魅力的に見えます。
インプロのショーでも、失敗しないように恐る恐る演劇するプレイヤーより、リスクに飛び込んでいくプレイヤーを観客たちは歓迎します。

人は失敗するかしないかのリスクが楽しいものなのです。

子どもの遊びを想像してみてください。

勝敗が決まっている予定調和のじゃんけん。
「今って誰が鬼で誰がタッチされた?」といちいち確認する鬼ごっこ。

…想像するだけで楽しくありませんよね。(笑)

でも大人になると、失敗したくないから、負けたくないから、波風立てたくないから、間違えたくないからと、平気でそういうつまらないことをしてしまうのです。

インプロは即興で物語を作っていく演劇です。それゆえどんな物語になるかは誰にもわかりません。
そうした未知に進むことはとても怖いことです。

「もしも自分の手におえない物語になったら…」「意味が分からない展開になってしまったら…」などと、失敗を恐れていてはとても物語を作ることはできません。

先の展開がどうなるのか恐れるより、どういう物語になっていくのかわからないことにワクワクして飛び込む。遊び心を持ってパートナーと物語を紡いでいく。

そのためには「失敗してもいいんだ!」というマインドが大切なのです。

「今ここ」を大事にする

インプロでは「今ここ」にいることが求められます。

今目の前にいる相手が何をしているか?どんなことを言ったか?
今自分がどんなことをしているのか?どんな言葉を発したか?
今一体この場で何が起きているのか?

一瞬一瞬に集中していないと見逃してしまいます。

「こういう展開にしたら面白そうだな」と先の展開を予想して作り上げるインプロほど面白くないものはありません。
自分の頭で描ける物語は、所詮どこかで観たことがあるような展開にしかならないのです。

逆に、「さっきこうしておけばよかったな…」などと過去に気持ちが引っ張られていても、今ここで起きていることを見逃してしまいます。

過去でもなく未来でもなく「今ここ」にいること。なかなかこれも難しいです。
気がつくと人は過去のことを考えたり未来のことを予測したり、はたまた自分の頭の中に意識をもっていかれてしまいます。

僕もインプロを始めた当初、「この先の展開どうしよう…」とか「自分なにやってるんだろう…」と自分の頭の中に意識がいきがちでした。

今ここにあることを使って遊び合う。それができるようになるとインプロはとても面白いものになります。
なんなら失敗だって使えるかもしれません。

インプロで「恐怖」に気づき「自由」になる

自由に即興演劇をしたいのにできない、その根本的な原因は「恐怖」です。

今井純さんは著書でこんなことを述べています。

人前で、まったく無防備な状態に置かれることは怖いことである。
自分の行動やアイディアに対して他人から評価される恐れ、自分の手におえない展開に身を置く恐れ…。

どうしても自分を守り、自分を守り、偽ってしまう。
その結果、自分独特の持ち味を活かすことができなくなる。

また相手とのつながりを遮断してしまい、建設的にシーンをクリエイトすることができなくなる。

インプロを体験すると、自分がいかにありのままでいられないか、いかに否定的で臆病で変化を恐れているか、いかに他者のことも自分自身のことも信頼していないか、身をもって知り、ガク然とする。
 
 即興演技では自由でなければならない。そして「自分を信頼し、相手を信頼すること」が必要不可欠である。

自由=ありのままの自分。
他の誰にもない魅力や独特の世界や限りない可能性が、ありのままの自分にはある。

しかし「恐怖」があるからありのままの自分になれない。
「恐怖」があるから他人とつながることができない。
「恐怖」があるから、エキサイティングで素晴らしい展開に向かっていけない。


「自由」の反対語は「恐怖」である。
「恐怖」を取り除き、いかに「自由」になるかが、即興演技をする際の一番のポイントである。

(引用元:「自由になるのは大変なのだ~インプロマニュアル~」著:今井純)

インプロの基本マインドを妨げる「検閲してしまう」、「相手のアイディアを否定してしまう」、「失敗できない」、「リスクを取れない」、「今ここにいられない」。これらはすべて”恐怖”からきています。

”恐怖”を手放すためには”恐怖”に気づくしかありません。
インプロをするとさまざまな”恐怖”に気づくことができます。

そしてインプロ体験を積み重ねた先に”自由”があります。

「インプロとは?」まとめ

インプロは台本のない中で物語を作り上げていく即興演劇です。

インプロで自由に即興するためには、「検閲しない」「相手にいい時間を与える」「失敗をオープンにする」「今ここに集中する」という基本マインドを身につける必要があります。

基本マインドを阻害する原因は「恐怖」です。
『人からどう見られるのだろうか?』『馬鹿にされたくない』『恥ずかしい』『未知に飛び込んで失敗したらどうしよう』という「恐怖」です。

「恐怖」に気づき手放していく。するとインプロだけではなく、実生活でも自由にありのままの自分を表現できるようになっていきます。
その成果を期待され、昨今では企業研修や学校教育でもインプロが取り入れられるようになりました。

もとは俳優訓練として開発されたインプロですが、俳優だけではなく、一般社会を生きる私たちにとっても身につけるべきマインド・スキルなのではないでしょうか。

みや

みや

新しい体験をするのが好きです。
エンタメも好きです。特にドラマは好きなので感想レビューをどんどん書いてます。
自身のコミュニケーション下手を克服すべく、日々コミュニケーションや人間関係に関する勉強をしています。
内向型のアドバイザーとしても活動中です。 

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