【原作】日生マユ『放課後カルテ』
【脚本】ひかわかよ
【演出】鈴木勇馬 他
【キャスト】松下洸平、森川葵、田辺誠一 他
日生マユさんのマンガ『放課後かルテ』が原作の同名ドラマ。
日本テレビが「マンガ」を原作にドラマを作る…。果たして大丈夫なのか?
主演は人気絶頂の松下洸平さんを起用。
令和に入ってからは珍しくなった「小学校」が舞台のドラマです。
1話から、あらすじ&ネタバレを含む感想レビューをしていきます!
もくじ
放課後カルテ あらすじ&ネタバレ感想レビュー(1話)
1話あらすじ
小児科医の牧野(松下洸平)が小学校の保健室に「学校医」として赴任した。
仏頂面で「保健室にはなるべく来ないでもらいたい」と言い放つ牧野に、児童たちも、6年担任・篠谷(森川葵)も唖然。
牧野は医師を学校に常駐させるという新たな試みで大学病院から送られてきた。
その日、いつものように保健室にやってきた児童・ゆき(増田梨沙)。授業中にもよく居眠りをしてしまうゆきは、保健室で寝る時間が心のオアシスだったが、「勝手に寝るな」と牧野に言われ…。
引用元:Tver
1話ネタバレ感想レビュー
1話のテーマはおそらく「信じてもらえない悲しさ」。
「裏山に秘密基地がある」と言っても信じてくれない。
「毎日9時には眠っているのに、どうしても居眠りしてしまう」と言っても信じてくれない。
本当のことを言っても誰も信じてくれないのって辛い。
まずは信じて聞いてあげる。
そういう気持ちを持つことも大事なのだなと学べる回でした。
男子児童・笹本
森の立ち入り禁止区域の中に、秘密基地があると言い張る笹本。
彼の友人たちは「誰も遊んでくれないからって、しょうもない嘘つくなよ笹本」と、誰も彼の言うことを信じません。
そんな光景を見ていたクラスメイトの2人。
彼の嘘を暴こうと、「その秘密基地連れてってよ!」と声をかけます。
クラスメイト2人を連れ、一緒に立ち入り禁止区域に入ると、そこには本当に「秘密基地」があった…!
「秘密基地」にはしゃぐ二人のクラスメイト。
しかし、実はずっと具合が悪かった笹本は、2人を案内した途端倒れ込んでしまいます。
笹本は、1週間前にこの立ち入り禁止区域に入ったことが原因でツツガムシに刺され、潜伏期間の末、ツツガムシ病を発症していたのだった。
「秘密基地」の存在を信じてほしくて、体調が悪いことを隠してまで山へクラスメイトを案内するとは…。
それくらい「信じてほしい」という気持ちが強かったんでしょうね。
【ツツガムシ病の臨床的特徴】
つつが虫病リケッチアを保有するツツガムシに刺されて5~14日の潜伏期の後に、全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱などを伴って発症する。
体温は段階的に上昇し数日で40℃にも達する。
刺し口は皮膚の柔らかい隠れた部分に多い。
刺し口の所属リンパ節は発熱する前頃から次第に腫脹する。
第3~4病日より不定型の発疹が出現するが、発疹は顔面、体幹に多く四肢には少ない。
テトラサイクリン系の有効な抗菌薬による治療が適切に行われると劇的に症状の改善がみられる。
重症になると肺炎や脳炎症状を来す。
北海道、沖縄など一部の地域を除いて全国で発生がみられる。
発生時期は春~初夏及び晩秋から冬であるが、媒介ツツガムシの生息地域によって異なる。
引用元:厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-18.html)
ツツガムシとはダニの一種らしい。
北海道、沖縄を除く全国各地に生息しているらしいので他人事ではないですね。
女子児童・ゆき
4年生になってから、授業中に居眠りをするようになってしまっていた「ゆき」。
日に日に急激な眠気は頻繁に襲ってくるようになり、とうとう、友達の話を聞いてる時や、給食を食べている時まで急に眠ってしまうようになる。
ある日、いつのまにか寝ていて、友人と遊びに行く予定をすっぽかしてしまったゆき。
次の日から友人たちから無視されるようになってしまう。
母親に「ちゃんと寝てるのに、どうしても眠くなってしまう」と相談しても、「夜更かししてるんじゃないの?」と信じてくれない。
友達にも母親にも誰にも「9時には寝てるのに、どうしても眠くなってしまう」ということを信じてもらえない。
徐々に「どうせだれも信じてくれない」と心を閉ざしてしまうゆき。
そしてある時事故が起きた。
ゆきは、立っている時に突然眠り、倒れてしまったのだ。
ゆきの「金縛りにあう」という発言や、ゆきの一連の症状から、牧野は、ゆきがナルコレプシー(過眠症)を発症していることに気づいた。
本当のことを言っても誰も信じてくれない。
何を言っても「嘘だ」と否定され続ければ、何も言いたくなくなってしまうのは当たり前のこと。
「嘘だ」と決めつけるよりも、まずは相手の話を信じて聞いてあげることが大切だなと思った。
【ナルコレプシーの臨床症状】
ナルコレプシーは、日中の過度の眠気や、通常起きている時間帯に自分では制御できない眠気が繰り返し起こることを特徴とする睡眠障害で、通常は突然の一時的な筋力低下(情動脱力発作)を伴います。
その他の症状として、睡眠麻痺、鮮明な夢、入眠時または覚醒時に起こる幻覚などがあります。
引用元:MSDマニュアル家庭版HP(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3%E3%80%81%E8%84%8A%E9%AB%84%E3%80%81%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%BC)
ナルコレプシーは1000人に1人が発症されるという、実はそこまで珍しくない睡眠障害。
実は、僕も過去に1人だけナルコレプシーを発症している人と出会ったことがあります。
その人はアルバイト先の同僚でした。
その人はこんなことを言っていました。
同僚「どんなタイミングでも急激な眠気が襲ってきて、それがくると抗えないんですよね。前に、階段を下りてる時にそれがきて、そのまま階段から落ちちゃいました。」
ナルコレプシー自体は命に関わる病気ではないものの、眠気が襲ってくるタイミングは自分でコントロールすることができず、タイミングによっては命の危機もありえるわけです。
その人は朝、昼の1日2回、寝ないようにする薬を服用していました。(夜は寝るために服用しません)
しかし、「薬を飲んでても、常に頭がボーっとしてる感じなんですよね~。常に眠いです」と眠そうな顔で言っていたのを今でも覚えています。
僕も、ナルコレプシーという存在を知らずにその人と接してた時は、「この人いつもダルそうでやる気ない人だな~」と思っていたので、ドラマの中で子どもたちが、ゆきを咎める態度に出るのは致し方ないことだな…とも思ってしまった。
本当に周囲の理解がないといけない病気。
そういう病も世の中にはあるということを心に留めておこう。
放課後カルテ あらすじ&ネタバレ感想レビュー(2話)
2話あらすじ
6年生を対象にAED講習が行われていた。
真剣に話を聞こうとしない児童たちに、牧野(松下洸平)は命の大切さを訴えるが、理子(中村たんぽぽ)は「牧野が患者を殺した」という啓(岡本望来)の言葉が気になっていた。
学校中にも「保健室に行ってはいけない」という噂が広まり、篠谷(森川葵)は牧野の言動も一因だと指摘するが、牧野は聞く耳を持たない。
理子は腹痛が我慢できず、牧野のいない保健室にこっそり入るが…。
引用元:Tver
2話ネタバレ感想レビュー
2話のテーマは『命の重さ』だろう。
「度胸試し」と称して木に登って飛び降りる。
子ども頃にやったことがある人も多いことだろう。
しかし、高所から飛び降りるという行為は、場合によっては大けがにつながり、最悪の場合命に関わる。
事の重大さをわからせるために牧野は、児童を病院へ連れて行き、不慮の事故で寝たきり状態になってしまった少年の姿を見せ、
「人って意外ともろいんだよ」
「あのときああしておけばよかったなんて思っても元には戻れない」
「命を落としたらかっこいいもクソもない」
などの厳しい言葉をつきつけます。
まさにその通り。
子どもを通して「人のもろさ」を教えてくれる回だった。
転校生・啓に「保健室には行くな」と言われる理子
病院から赴任してきた牧野に対して、何らかの恨みをもっている転校生の啓。
腹痛を訴える理子に対して啓は「牧野先生は患者を殺したんだよ。だから保健室には行っちゃダメ」と警告。
さらにクラスメイト達に対しても啓は、「牧野先生は代理ミュンヒハウゼン症候群かもしれない」などと吹聴する。
途端に牧野は疑惑の存在となり、児童たちの間では「牧野先生は危険。保健室には行ってはいけない」という噂が飛び交うようになった。
しかし、腹痛がどうしてもおさまらない理子は、啓の目を盗んで保健室へと向かう。
結果的に理子は『IgA血管炎』と判明。
【IgA血管炎の症状】
・ヘノッホ・シェーンライン(Henoch-Schonlein)紫斑病やアナフィラクトイド紫斑病などともよばれ、血管性紫斑病のひとつです。
・出血斑(紫斑)、むくみ(浮腫)、腹痛、関節痛などが主な症状です。
・3~10歳に最も多く、男児がやや多い傾向があります。
・小児では最も頻度の高い血管炎で、年間10万人あたり10~20人の発症率とされています。
・秋から初夏に多く、夏は少なくなります。
・およそ50%の症例で風邪などの先行感染があり、発症までは1~2週のことが多いようです。
・およそ半数に腎臓病が認められ、紫斑病性腎炎と呼ばれます。
長期的には良くなることが多いのですが、1~2%の方には腎不全が起こるとされています。
引用元:(https://www.fukuoka-med.jrc.or.jp/dept/internal/pediatrics/HSP)
啓の余計な一言がなければ、腹痛を感じた時点で保健室でみてもらえたのに…。
木から落ちた少年
啓の広めた「牧野は危険。保健室には行くな」という噂は、さらに大きな事態を引き起こす。
4年生の西原は、友だちの三島に男らしいと認めてもらいたくて、「木から飛び降りる」練習をしていた際、誤って落ちてしまった。
たまたま近くにいた啓は、「大丈夫?保健室行く?」と言って西原の元へかけよると、西原は「保健室なんか行くもんか!」と、例の噂を信じ、保健室に行くことはなかった。
放課後、ついに三島の前で木から飛び降りるところを見せようとした西原。
しかし木に登ろうとしたところで、急に倒れてしまう。
結果的に西原は『緊張性気胸』で病院に運ばれる事態となってしまった。
【緊急性気胸】
肺内の空気がなんらかの原因で肺外の胸腔内に漏れて、肺がしぼんでしまった状態を言います。
その胸腔内に漏れてしまった空気が、肺や心血管を圧迫している状態が緊張性気胸です。
緊張性気胸は緊急で治療を要する疾患です。
肺や心血管を圧迫するため、放置すると呼吸状態が悪化するだけでなく、血圧が低下したりショック状態となったりします。
そのため、診断や適切な処置が遅れると多くの場合は致命的となり、命に関わる状態に陥ります。
引用元:(https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/tension_pneumothorax/)
(自分の撒いた「小さな悪意」のせいで、その犠牲になる人がいる…。)
啓は自分のせいで、色んな人が保健室に行けなくなってしまっている事態に対して、徐々に責任を感じているようだった。
啓が学校から帰っていると、神社でお年寄りが倒れているところに遭遇。
急いで駆け寄るも一瞬パニックになる。
一旦落ち着き、病院に電話をかけ、AEDを取ってきて、保健室に電話をかける。
牧野から「AEDを使え!心臓マッサージをしろ!」と次々と指示され、「できない…」と、泣き出す啓。
しかし「お前がやらなければ助からない」という牧野の言葉に鼓舞され、啓は必死に言われたとおりのことをやるのだった…。
実際に目の前で人が倒れたら、大人だって動揺するし怖い。
子どもの時にその場に遭遇していたら…と考えるだけで、啓の泣きたい気持ちがすごくわかる。
牧野が赴任してから、事故や病気が多発しすぎだが、色々と考えさせられるので楽しい。
次回にも期待。
放課後カルテ あらすじ&ネタバレ感想レビュー(3話)
3話あらすじ
かつて担当していた患者・直明(土屋陽翔)の姉が、冴島啓(岡本望来)だと知った牧野(松下洸平)。
牧野を慕う弟の為に、悪い噂を流すことで学校から追い出し、牧野を病院に戻そうとしていたのだ。
直明は春頃に手術ができる事になり自宅へ戻るが、我が子の体調を第一に考える母・環(ソニン)は、直明が学校に行くのを許そうとしない。
しかし好奇心旺盛な直明は、環が留守の隙を狙って外出し、体調を崩してしまう…
引用元:Tver
3話ネタバレ感想レビュー
冴島家の物語
3話は冴島家の物語だった。
先天性心疾患のため、学校に行けない直明。
本当は外で思い切り遊びたいし、友達とも遊びたい。
そんな思いから、息が苦しくなっても一生懸命啓のクラスメイトたちと一緒に学校探検をする直明の健気な姿を見て、胸が痛くなった。
病気のせいで「普通」が奪われてしまう切なさ。
直明だけではない。
病気の子の兄妹として生きる啓もまた切ない。
「病気の子の兄弟は親の愛情を満足に受けられない。そのせいで早く大人になろうとする。だから無理が生じる」
牧野のセリフはまさにその通りだと思う。
クラスの中で誰よりも大人びている啓だが、そうは言っても小学生なのである。
まだまだ親の愛情を感じていたい年頃に、病気の兄弟のために自分が親に甘えることを我慢し、兄弟のケアに回る…。
…それにしても、母親役のソニンが怖すぎる。
直明の心配をするがあまり、周囲の人間を警戒しすぎて、常に人を殺しそうな顔をしている。
放課後カルテ あらすじ&感想レビュー(4話)
4話あらすじ
2泊3日の野外学校。嫌そうな態度で引率する牧野(松下洸平)に、篠谷(森川葵)は呆れ顔。児童たちが非日常の空間にそわそわする中、水本羽菜(小西希帆)はみんなと馴染めず浮かない顔をしていた。
以前、クラスで作った七夕飾りを放課後に壊しているのを、藤野一希(上田琳斗)に見られ、野外学校中にバラされるかもしれないという不安からだった。
そんな不安が募った羽菜は、衝動から一希を川に突き飛ばしてしまい……。
引用元:Tver
4話感想レビュー
破壊衝動をしてしまう
母親が出て行ってしまったことで不安定になってしまっている羽菜。
その不安から破壊衝動をしてしまう…というメンタルヘルスのお話。
破壊行動をどうしても抑えられない人の心理は僕にはわからない。
わからない視点で今回の話を観ているからか、途中からちょっとモヤっとしてしまった。
「羽菜は可哀想」
「心が不安定な羽菜は悪くない」
「羽菜のせいじゃない」
全体的にそういう「心が不安定な羽菜を可哀想な子と思え!」という意図が透けて見えてしまっていたように思った。
原作者の方が、『過去の出来事を思い出して気持ちがぐしゃぐしゃになった…』とXにポストしているのを見たので、もしかしたら原作者の方の体験が、今回の話の元になっているのかもしれない。
そうだとしたら、「羽菜が問題行動を起こすのは心の不安定さのせいで仕方ないことだ」という、やや破壊行動を正当化しようとする描かれ方にも納得できる。
本音を言うと僕は、「心の不安定さ」を理由にして、周囲に迷惑をかける人が苦手だ。
今まで何度となく、「わたし心が不安定だから…」と自己申告されたうえで約束をドタキャンされたり、すごい遅刻をされたりと振り回されたことがある。
でも、そういう「心の不安定さ」を言い訳にされると、こちらも咎めにくいのです。
「しょうがないよね」と言うしかない。
だからもし今回の話しも、「羽菜さんは心が不安定だったから、クラスのみんなが作ったものを壊してもしょうがないよね!」「クラスメイトを突き飛ばしたのもしょうがないよね!」で片付けられてしまったらちょっと嫌だ。
放課後カルテ あらすじ&感想レビュー(5話)
5話あらすじ
両親との関係で心に深い傷を負った水本羽菜(小西希帆)が、「自分で自分を壊してしまう一歩手前にいる」と篠谷(森川葵)に言われた牧野(松下洸平)。
羽菜の自宅へ向かい、「お前を助けたい」と牧野が語りかける背景には、彼の苦い過去があった。
ー 大学病院で牧野は樫井貴之(塚本高史)の息子・真琴(三浦綺羅)を診察したがよくならず、貴之は牧野の誤診だと主張。高崎医局長(田辺誠一)は牧野に「問題はお前だ」と言い放つ。
引用元:Tver
5話感想レビュー
正直に話せる環境
5話は、前半が牧野が小児科勤務の頃の話で、後半は4話の続きという構成でした。
前半後半ともに共通するテーマが「正直に話せる大事さ」。
小児科医でありながら不愛想な牧野。
病院勤務時代、そんな牧野を怖がって「病院に行きたくない」と言う子どもがいました。
その子は病院で診察を受けたくないからと、具合が悪いことを父親に隠します。
本来、早期に発見できれば問題なかったものが、具合が悪いことを申告しなかったことで症状が悪化。一歩遅れれば命の危機さえある状況になりました。
ー そして小学校の保険医になった牧野は、再び正直な気持ちを隠してしまう子どもと向き合うことになります。
自傷行為は声にならない心の叫び
学校を休んだ水本羽菜。
羽菜の様子が気になった牧野は、直接彼女の家に向かいます。
そして牧野は優しく語り掛けます。
「聞かせてくれないか、お前の言葉で」
ゆっくり羽菜は自分の気持ちを牧野に吐き出します。
…お母さんが出ってた。
学校から帰ったらいなかった。
こうなるのはわかってた。
いらないって言えばいいじゃん!
私がいるから(夫婦関係を)終われなかった。
私がいるからお父さんはどこへも行けない。
私なんていないほうがいい。
なぜ自傷行為をしてしまうのか?
その根底には自尊心の欠如があると、専門家は訴えます。
「自分はどうなっても構わない」あるいは「自分の健康を損ねても悪いことではない」という投げやりな気持ちや「自分は大事にされる価値がない」という強い劣等感が根底にあるということです。(京都こころの健康増進センターHPより抜粋)
「自傷行為は苦し紛れの下手くそなやり方ではあるのですが、“救いを求める言葉にならない叫び”なのです」(東京都人権啓発センターHPより)
羽菜は「わたしなんていない方がいい」と言っていました。
この言葉はまさに、「自分は大事にされる価値はない」という思い込みからくるものでしょう。
大事にされるためにはいい子でいなければいけない。
大事にされるには甘えてはいけない。
大事にされるには…。
大事にされるために、無意識のうちに抑圧してしまった羽菜の素直な感情を吐き出す手段が、自傷行為しかなかったのでしょうね。
素直に自分の気持ちを表現しても大丈夫!
「自分は大事にされる価値はない」と思いこむクセが身についてしまった羽菜は、親子関係だけでなく、友人関係でも相手の顔色うかがってしまいます。
「私は好きだけど、コケの自由研究なんて他の人は興味ないよ」
「七夕飾りを壊したことを正直に話したら絶対に嫌われる」
「わたしなんて仲間外れにされる」
そうやって、周囲の反応を一方的に想像して委縮してしまう羽菜。
そんな羽菜に同級生の藤野がこう返答します。
「なんでそうやって決めつけんだよ。やってみなきゃわかんないだろ」
その言葉を聞いた羽菜の表情が印象的だった。
やる前から「ぜったいこういう結果になる」と決めつけていた自分自身に気づかされた!という顔でしたね。
そしてその後、牧野にも促され、羽菜は父親に自分の正直な気持ちをぶつけます。
羽菜の気持ちを知った羽菜の父は、泣きながら謝り、羽菜を抱きしめるのでした。
自分の正直な気持ちを話しても大丈夫。怖くない。
今回の経験で、羽菜は少し自尊心を取り戻したのではないでしょうか?
少しずつ、「わたしは大事にされる価値がある」と羽菜が心から感じられるようになったらいいなと思いました。
放課後カルテ あらすじ&感想レビュー(6話)
6話あらすじ
寝坊が目立つようになってきた篠谷(森川葵)を気に掛ける牧野(松下洸平)。
篠谷のクラスでは、れいか(畠中一花)や遥(斉藤百花)、芽依(凉川美春)の女子グループと、珍しく話す凛(中田煌理)の姿が。
しかし、流行りの色つきリップの話など、れいかたちの遊び方に凛はついていくことができず、疎外感を覚えていた。
そんな中、篠谷がれいかの色つきリップを没収した件で、れいかの母が学校に乗り込んできて…。
6話感想レビュー
理想は時に呪いになる
児童に寄り添える良い先生でありたい。
児童に好かれ、話しやすい先生でありたい。
クラスで起こっていることを把握して解決したい。
先生として、
6年生の担任として、
いろんな理想を抱いている篠谷。
理想を叶えるために、眠る時間も削りご飯も満足に食べず自分を犠牲にしてしまう篠谷の姿が痛々しい。
そんな彼女に牧野がこう叱ります。
気を張ってたって、怒るわ遅刻するわ体調崩すわ理想掲げるのは結構だが到底及ばない。
事実支障が出てる。
自分はその程度だって自覚しろ。
理想を夢見て倒れるより、及ばないことを自覚して動ける方があいつらの為だろ。
ごもっともな意見。
だけど、理想に燃えている時って周囲が見えなくなってしまうもの。
「寝てる暇ない!働きたい!」と言う篠谷の気持ちもわかります。
理想は時に呪いになります。
「理想通りでいなければ」と、自己犠牲が当たり前になることもある。
「理想通りに働きたい」と、職を転々としてしまうこともある。
「理想の自分」を夢に描きすぎて、目の前の仕事がおろそかになってしまうこともある。
牧野の言うように、「自分はその程度だと自覚」したほうがいいのかもしれませんね。
みんな嫌われるのは怖い
リップを万引きしてしまった凛。
凛は、内に秘めた本音を篠谷にこう告白します。
なくちゃダメだったんです。
嫌われるのとか簡単だから、仲間外れにならないように持たなくちゃって…。
なのに、盗って見つかって、お母さん泣いて、私またひとりになるの…?
とてもわかる。
嫌われたら一人ぼっちになるかもしれない。
仲間外れにされないよう、自分の本音を隠してまわりに合わせようとする凛の気持ちが手に取るようにわかる。
そんな凛の告白に、篠谷はこう答えます。
怖いよね。
怖いのは先生も、本当はみんなも同じ。
本当にその通り。
「嫌われる勇気を持て」なんて簡単に言うけど、そんな勇気なかなかもてない。
大人も子どもも関係なく、基本的にみんな「嫌われるのは怖い」と思っている。
明るく振る舞うあの子も、無邪気に見えるあの人も、大人の先生だって、みんな本当は「嫌われるのが怖いんだ」と思えるとちょっと心が軽くなります。
さらに篠谷は凛にこんな質問をします。
笹倉さんが一番うれしかったことって何?
あなたがブレないように、一番大切な気持ち思い出して。
この質問に凛は涙を流してこう訴えます。
嬉しい子といっぱいあったのに、悲しいこと1個あったら嬉しい気持ち全部なくなっちゃった。
これもわかる。
嬉しいことが100個あっても、嫌なことが1つあるとそればっかりが心を支配してしまうことってあります。
そんな凛の嘆きに対して篠谷は、
嬉しいって思えることも、意外なとこからやってきたりするよ。
だから、笹倉さんも絶対大丈夫。
と答えるのでした。
普段から本音を隠して生きていると、自分の本音に鈍感になっていきます。
そんな時に「自分は何が嬉しいのだろう?」と問いかけてみると良いですね。
ラストシーンで、れいかから「日曜、みんなでカラオケに行くけど凛ちゃんも来る?」と誘われた凛でしたが、彼女は自分の本音と向き合い、勇気を持ってこう答えます。
中学生になってからにする
「そんなの行かない!」と相手を批判するでもなく、
「お母さんに聞いてみる…」と中途半端な返事で濁すでもなく、
自分のできる範囲を的確に相手に伝えて断る。
いや~凛の態度は大人でもできない所業だ。
見倣いたいと思います。
放課後カルテ あらすじ&感想レビュー(7話)
7話あらすじ
健康なのに保健室を出ようとしないれいか(畠中一花)に、迷惑がる牧野(松下洸平)。
何か事情があるのを察した篠谷(森川葵)は、牧野にれいかを託して教室へ。
れいかは率直な物言いをクラスメートに「感じ悪い」と指摘され孤立していたのだった。
そんな中、牧野は6年1組担任の藤岡(平岡祐太)に頼まれ、不登校の児童・聡(渡邉斗翔)の家庭訪問に同行。
しかし聡は牧野たちを無視して家を飛び出してしまう。
引用元:Tver
7話感想レビュー
『放課後カルテ』が作中で伝えたいことは1話から一貫している。
それは「自分の気持ちを素直表現しなさい」ということ。
ドラマを観ていると、作者の方の”ささやき”がたくさん聴こえてくる。
「自分の気持ちよりもまず相手の顔色をうかがってない?」
「両親に遠慮して、素直な気持ちを押し殺してしまってない?」
「自分の言動を相手がどう受け取るか、一方的に想像してない?」
「嫌われたくなくて、その場しのぎで嘘ついちゃってない?」
「まわりがどう思うか?よりも、まずは自分がどう感じるか大切にしてみて」
「自分の気持ちを素直に表現してみようよ」
「繕った自分を好きになってもらっても、あとで無理が生じるよ」
きっと作者自身、自分が子どもの頃、もしくは学生時代、なんなら大人になってからも、自分の気持ちを素直に表現できなくてたくさん苦しんできたんじゃないでしょうか?
そして同じような苦しみを抱える人を一人でも多く救えるようにと、『放課後カルテ』を創作しようと作者は思い至ったのではないか?
そう勝手に想像しています。
「素直」に生きる大切さと大変さ
7話でも素直に自分の気持ちを表現できない児童・聡が出てきましたね。
彼は母親に遠慮して、「出て行った父親に会えなくて寂しい」という素直な気持ちを隠していました。
さらに今回は、素直な気持ちを全部口に出してしまう児童・れいかにもフォーカスを当てているところが面白い。
これまでの話では、自分の気持ちを押し殺してしまう児童に対して、「ちゃんと言葉にしなければ相手に伝わらない」ということを描いてきていましたが、今回は「言葉にすればいいってもんじゃない」という教訓も伝授してくれています。
7話を通して作者が伝えたいことをまとめると以下のようになります。
★なんでも思ったことを素直に発言してしまう人は、「相手がどう受け取るか?」を少し想像してから言葉を選んで発言してみよう。
さらに、事前に「もし言われて嫌なこととかあったら正直に教えてほしい」と相手に伝えておくといいよ
★自分の気持ちを押し殺してしまう人は「自分の気持ち」を素直に表現してみよう!
その際「相手の人格を否定しない」ように気を付けて!
★お互いが自分の気持ちを正直に表現し合うことは、時に衝突を生むこともある。
波風が立つことも当然あると理解しよう。
でもそこで諦めたり相手から逃げていたら何も解決しない。
お互いが納得できるところを見つけるために歩み寄ってみる姿勢が大切!
まとめていてふと思いました。
「これてってつまりアサーションじゃん!」と。
アサーションとは…
自分も相手も大切にしようという自己表現で、自分の意見、考え、気持ちを正直に、素直に、その場にふさわしい方法で言ってみようとすることです。
同時に、相手が同じように表現することを待つ態度をともないます。
引用元:『自己カウンセリングとアサーションのすすめ(金子書房 平木典子著)』
「アサーション」は企業研修でも積極的に取り入れられているコミュニケーションスキルのひとつです。
今の日本人に足りないものなのでしょうね。
自己犠牲しすぎず、相手の言動を否定せず、お互いが納得できるよう折り合いをつける。
当たり前のことだけどめちゃめちゃ大事なことだな~。
放課後カルテ あらすじ&感想レビュー(8話)
8話あらすじ
音楽会に向けて各クラスで練習が進む第八小学校。
芳野(ホラン千秋)が担任する1年2組の真愛(英茉)は教室ではクラスメートと一緒に歌うことも、話すこともできず、母の彩(野波麻帆)を悩ませていた。
自宅でのコミュニケーションや、授業態度・成績にも問題のない真愛は、
なぜ学校で話すことができないのかと、相談を受けた牧野(松下洸平)。
牧野は、真愛が社会的な場面でのみ声が出せなくなる「場面緘黙(ばめんかんもく)」だと診断する。
引用元:Tver
8話あらすじ
今回のテーマは「場面緘黙」。
「場面緘黙」とは、場所によって話をすることができなくなってしまう、不安症の一種。
人見知りや恥ずかしがり屋とも違うそうです。
場面緘黙とは?
人見知りや恥ずかしがり屋との違いは、「特定の場面で話せない状態が1か月以上長く続くこと」「リラックスできる場面でも話せないことが続くこと」です。
入園や入学で新しい環境に入って、慣れるまでは口数が少ないことはよくあることです。
しかし、人見知りや恥ずかしがり屋の子どもでも、学校に慣れて緊張がなくなれば話すことができます。
場面緘黙の症状がある子どもは、家庭ではごく普通に話すのに、家族以外や学校で話せないことが続きます。不安症の一つとされています。
例えば、友だちや先生とあまり話せなかったり、クラスメイトの前で発表したりすることができません。
家から一歩出ると全く話せなくなる子もいます。本来持っている力を、人前で発揮することができず、学校生活や社会生活に支障が出ます。
場面緘黙の症状をもつ子どもの中には、話すことだけでなく、「かん動」といって動作が抑制される子どももいます。
人前で食事することやトイレに行くこと、人前で動作することに、強い緊張や不安を感じる社交不安症をあわせもつと考えられています。
人見知りや恥ずかしがり屋の子どもでも、学校で緊張が極端に高い子どもやコミュニケーションが苦手な子どもの場合は、場面緘黙にあたらなくても、環境調整や支援が必要です。
引用元:https://heart-net.nhk.or.jp/heart/contents/5_1/
改善させていくためには、小さな成功体験を積み重ねていくこと。
「できるんだ」という小さな自信が積みあがっていくと、徐々に不安がなくなっていく。
ということを牧野が言っていました。
僕も小さい頃、「場面緘黙」ではなかったと思いますが、学校では極度に緊張してしまう子供だったので、真愛ちゃんの気持ちが痛いほどわかります。
「なんで喋らないの?」
「一緒にいてもつまんない」
そんな言葉をよく言われていました。
心では色々「お話」しているのに、それが声にならない。
でも家では普通に喋るから、家族は学校での自分の態度を知らない…。
過去の自分と照らし合わせながら観ていたので、
音楽会で、真愛ちゃんが最後にほんの少しだけ、自分から振り付けに合わせて手をあげ、口を開けられたのには感動しました。
小さな成功体験を積んで、少しずつ自信をつけ、不安を乗り越えていけたらいいな。
放課後カルテ あらすじ&感想レビュー(9話)
9話 あらすじ
心疾患を抱える直明(土屋陽翔)は、母の環(ソニン)らが待ち望んだ手術がようやくできることに。
牧野(松下洸平)は、弟の手術に不安を隠せない啓(岡本望来)を励ますが、医師としての立場から「絶対大丈夫」と声をかけることができない。
一方、直明は入院中に仲良くなったるか(佐藤恋和)の手術直後の姿を見て、ショックで閉じこもってしまう。
そんな直明のため、啓に頼まれて病院へ向かった牧野だが…。
引用元:Tver
9話 感想レビュー
手術の日が差し迫りまり、急に手術を受けるのが怖くなってしまった直明。
布団に隠れる直明に牧野が声をかけます。
牧野の声を聞いた直明は布団から顔を出し、心の内を牧野に打ち明けます。
直明「なんで僕だけ?みんなは元気に学校行ったり、歌ったり遊んだりしてるのに、なんで僕だけ手術しないといけないの?手術怖いよ。お父さんもお母さんも高崎先生も佐久間先生も石田さんもみんな大丈夫って言うけど本当?本当に大丈夫なの?牧野先生も大丈夫って思う?」
牧野「…」
直明「やっぱり大丈夫じゃないんだね」
牧野「そんなことはない。お前は、治る。直明は、治る」
直明「絶対?」
牧野「絶対にだ」
医師にとって「絶対に治る」という言葉は禁句。
それでも牧野は、直明に手術を受けて欲しくてつい「絶対に治る」と言ってしまったんですね。
牧野はさらに続けてこんなことを直明に伝えます。
牧野「約束しよう。元気になったら何がしたい?かくれんぼか?鬼ごっこか?」
直明「野球」
牧野「野球?」
直明「先生できる?」
牧野「ん~。二人で野球ってできんのか?」
直明「じゃあキャッチボール」
牧野「わかった。キャッチボールな」
直明「できる?」
牧野「ん~。練習しとく。だからお前も元気になれ」
直明「わかった!牧野先生は僕に嘘ついたことないもんね」
保健室の先生として子供と接するうちに、どんどん子どもに寄り添えるようになってきた牧野の成長を感じました。